認知症の画像診断-その2-;アミロイドPET

はじめに

 アルツハイマー病をはじめとする認知症の診断において画像診断は必須の補助的な検査法となり、その進歩にはめざましいものがあります。その1でお話しした脳血流SPECTやMRIは神経の変性を示す生物学的指標として早期診断、鑑別診断、および経過観察に日常の診療に用いられています。さらには、分子レベルでの変化を画像でみることが最近できるようになってきました。今回は、その中で、脳内のアミロイドをみるPETについて説明します。 

アミロイドPETの有用性

 認知症性疾患の最も多くを占めるアルツハイマー病の基本的な病理学的変化は、老人斑と神経原線維変化、および神経細胞の脱落です。老人斑はアミロイドβ蛋白からなり、アミロイド前駆体蛋白から蛋白質分解酵素により切り出されます。アミロイドカスケード仮説は、アミロイドβ蛋白の沈着が原因となり神経原線維変化と神経細胞脱落を引き起こすという説です。アミロイドβ蛋白はアルツハイマー病において認知症が発症する15年ぐらい前から大脳皮質に沈着するとされています。認知機能が正常の健康な方でも大脳にアミロイドβ蛋白の沈着が60代で約10%、70代で約25%、80代で約50%の方にみられ、アルツハイマー病の発症の危険因子と考えられています。このアミロイドの沈着をみることができる検査がアミロイドPET検査です。アミロイドPET用の医薬品を静脈内に注入し、30分~90分後に20分間ぐらいの撮像を行います。副作用は非常に少ない検査です。このアミロイドPET検査用の医薬品は製造販売が許可されていますが、2019年8月現在、保険収載はされていません。
 アミロイドPET検査は、臨床的に認知症があり、その背景病理としてアルツハイマー病の可能性が支持、または除外されると診療上有益である場合に適応が考慮されます。
 わが国のアミロイドPETに関するガイドライン(http://jsnm.sakura.ne.jp/wp_jsnm/wp-content/themes/theme_jsnm/doc/amyloid_pet_imaging_gl_2.pdf)では適正な使用として、以下の2つが挙げられています。

臨床経過が非典型的であり、適切な治療やケアのためにアミロイドβ病理の確認が必要な認知症症例
早期発症の認知症におけるアミロイドβ病理の確認(65歳未満の早期で発症する認知症にはアルツハイマー病以外の前頭側頭葉変性症などの認知症の発症が多いため)

おわりに

 今まで死後脳において病理学的にしか証明できなかったアミロイドβ蛋白の沈着を生きたままで観察できるようにしたアミロイドPETの登場は、アルツハイマー病を根本から治療する薬剤の開発に欠くべからざるものになっています。一方、臨床症状や神経心理学的検査、ならびにMRIや脳血流SPECTからアルツハイマー病が疑われたとしても、PETでアミロイドβ蛋白の沈着がみられない症例が少なからず存在することが明らかになってきました。このように、現時点ではアルツハイマー病に有効な根本治療薬は存在しないものの、アミロイドPETは認知症診療において大きなインパクトを与えることが証明されつつあります。

アミロイドPET陰性例と陽性例

国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンター
松田博史